フクロウ 題字:書評


誰のためのデザイン?

―認知科学者のデザイン原論―

THE PSYCHOLOGY OF EVERYDAY THINGS

Donald A. Norman 著 野島久雄 訳
新曜社,403p,ISBN:4-7885-0362-X,1990 (\3300).
これまでも、これからも教科書たりえる一冊
05 May 2006

 原著は1988年と非常に古いが今後もずっと価値ある書籍であり、特にユーザインターフェイス設計者には良い教科書だ。なぜならヒトの心理学的特性はそう短期間には変わりようがなく、ヒトの心理学的特性を工業製品に活かしましょうという考え方は設計において常に必要だからだ。

 本書はドアノブからコンピュータに到るまでの使いづらいデザインの事例紹介と、なぜ使いづらいのか、どうすれば使いやすくなるのかを心理学的側面から要約してまとめている。
 本書で特に指摘しているのは、

  1. 意匠を凝らすことで使いづらくなる場合(ex. どこ押していいかわからないドア)、
  2. 高機能化によって使いづらくなる場合(ex. 保留が「681」とプッシュさせる電話機)、
  3. そもそも新しすぎて使いやすさまで考えが回っていない場合(ex. 計算機のCUI)
であり、本書の対策を評者なりにまとめると:
  1. どの時点でも何が出来るかをハッキリ示す
  2. 操作対象、操作結果、現在の状態を示す
  3. システムの概念が直感的であること
  4. 操作と結果が直感的であること
  5. 直感的でなければ少なくとも標準にそろえること
となる。
 余談だがツーカーSなどは上記をほぼ満たしていて非常にわかりやすいのだが、現在の状態(架けようとしてる番号)が見えないのが難点だ。

 上記対策は考えてみるとあたりまえのことなのだが、なかなか実践されていない。使いづらいデザインは今も変わっていないのはなぜか?
 本書を読み進めるとわかるが次の構造的問題点がある。

  1. 意匠優先、機能優先で使いやすさは後回しになりやすい。
  2. 設計者とユーザの乖離していて使いやすさが作りこめない。
  3. 工業製品は徐々に高機能化・複雑化する。
  4. 使いやすさは使ってみないとわからないので訴求力が弱い。

 実際には工業製品は購入後、長期間に渡って使用されるので、使いやすさはメーカへのロイヤリティを高める重要な要素である。特に昨今ではCRMのようなツールの発達により、使いやすさはより計測しやすくなっており、評価項目としての重要性を増している。

 本書は1988年ということもありソフトウェアについての言及は隔世の感があるが、本質的な着眼点・問題点は変わっていない。むしろ蓄積的に機能追加が可能なソフトウェアにこそ、今後より使いやすさが問われるようになってくるだろう。


読了 2006.05
硬度 ☆□□
読みやすさ ☆☆☆
読む価値 ☆☆☆
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