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ボリビア出血熱,ラッサ熱,エボラ出血熱,エイズ,ハンタウイルス,そして薬剤耐性病原体...本書は未知なる感染症の,発生から病原体の同定,その鎮圧までを綴る.もちろん,上記感染症の一部は(いや,大半は)鎮圧されていない.感染症に対する人類の戦いと,その敗北の書,と僕は表現したい.
本書を読むと,未知なる感染症の出現には幾つかのパターンがあることに気づく.(1)商品作物の単作による環境の単純化.(2)開発のための未開地域への侵入.(3)スラム化による公衆衛生の低下.(4)都市化による感染母集団の増加.(5)性交渉や麻薬,闇医者,売血等による体液交換.(6)薬剤等による淘汰圧から逃れるための,病原体の適応進化.
だが一般に(1)〜(6)の全てを自国内で満たしうる発展途上国でこそ,新たな病原体,感染症は頻繁に出現する.そして医療と公衆衛生に予算を注ぎ込めない経済状況であるがゆえに,その被害は甚大だ.
とはいえ,先進国も安全ではない. そして病原体の多剤耐性獲得は,この病原体との戦争に終わりもなければ勝利もないことを暗示している.アジアのマラリア原虫の一部は,全ての抗生物質に対して耐性を持っている.薬剤投与による病原体の根絶は,殺虫剤によって蚊が絶滅しなかったように,不可能だった.そして不死身の病原体だけが,後に残された. 読み進むほどにイタチごっこと八方塞りを感じてしまう.答えもなく,残された時間も少ない.だが目を背けて,頭を下げて,やり過ごせるものではない. まずは現実を知ることだ.そして本書は,そのための必読書だ. |
[上巻][下巻] |
| 献辞 | 1 | |
| 序文 | 9 | |
| まえがき | 13 | |
| 第一章 | マチュポ――ボリビア出血熱 | 25 |
| 第二章 | 健康転換の時代――疫病根絶を目論んだ楽観主義の時代のなかで | 49 |
| 第三章 | サルの腎臓と満ちてくる潮――マーブルクウイルス、黄熱、ブラジル髄膜炎の流行 | 83 |
| 第四章 | 森のなかへ――ラッサ熱 | 107 |
| 第五章 | ヤンブク――エボラ | 149 |
| 第六章 | アメリカ建国二〇〇年祭の陰で――ブタインフルエンザと在郷軍人病 | 223 |
| 第七章 | ヌザーラ――ラッサ熱、エボラ出血熱、そして、発展途上国の経済政策と社会政策 | 279 |
| 第八章 | 革命――遺伝子工学とがん遺伝子の発見 | 317 |
| 第九章 | 微生物を引きつける都市――都市を中心に広まる病 | 335 |
| 第十章 | 遠い雷鳴――性感染症と麻薬静注者 | 373 |
| 第十一章 | ハタリ−ヴィニドゴドゴ(危険−とても小さなもの)――エイズの起源 | 405 |
| 第十一章 | ハタリ−ヴィニドゴドゴ(危険−とても小さなもの)――エイズの起源(承前) | 7 |
| 第十二章 | (ほとんど男性が論じてきた)女性の衛生――毒素性ショック症候群 | 93 |
| 第十三章 | 病原菌の逆襲――新薬を開発しつづける人間たち――薬剤耐性の細菌、ウイルス、寄生虫 | 125 |
| 第十四章 | 押し寄せる第三世界化の波――貧困、貧弱な住宅、社会の絶望と病気とが織りなす現実 | 201 |
| 第十五章 | すべてが迅速に――アメリカのハンタウイルス | 313 |
| 第十六章 | ヒトと自然――アザラシの疫病、コレラ、地球温暖化、生物の多様性、微生物のスープ | 345 |
| 第十七章 | 解決策を求めて――備えと、監視と、新しい理解 | 411 |
| あとがき | 453 | |
| 謝辞 | 455 | |
| 訳者あとがき | 458 | |
| 索引 | ||
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