フクロウ 題字:書評

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誰も教えてくれない聖書の読み方

KEN'S GUIDE TO THE BIBLE

Ken Smith 著 山形浩生 訳
晶文社,275p,ISBN:4-7949-6473-0,2001 (\1800)
読めば絶対に聖書が読みたくなる本.
皮肉ではなく,キリスト教の普及に一役買える名著.【03 Mar. 2001

 カソリックもプロテスタントも経典としている旧約,新約聖書.その中のいろいろなエピソードは,僕みたいな無宗教な人間でも結構知ってたりする.でもその聖書を,最初から最後まで通してキッチリ読んだことのある人は,実はキリスト教徒でもほとんどいないらしい.ふ〜ん,そんなもんかねぇ.
 で,本書の著者であるKen Smithは,そのキッチリをやってしまった.するとどうだろう,聖書の中で繰り広げられる世界は,“あんぐり。ページ一面が、発狂した幻覚にねじくれた道徳感、どん欲、血みどろ欲情まみれ。”だったのだ.
 もちろん,いいことも書いてある.でも,「トンデモ」な記述もかなりある.

 ってことで本書は,二冊の聖書を頭からちゃんと読んで解説したガイドブックだ.前後の文脈から「そりゃおかしいだろ」と突っ込んでみたり.あまりに残虐だったり,理不尽,セクハラな個所を指摘する.さらに,聖書物語として世間一般で常識となっている内容が,実は聖書に全く書いてなかったり,前後の文脈を無視した我田引水だったりするところも,きちんと押さえてある.
 たとえば,こんな感じ:

  
聖書は、アダムとイブが食べた禁断の果実がどんなものだったのかは、全く説明していない。バナナだったかもしれないよ。
――創世記3:1−6(本文p35)

サウル王の娘への愛を証明するために、ダビデはペリシテ人100人を殺してその包皮を王に捧げている。
――サムエル前書18:27(本文p69)

神さまは、荒野の選民たちの人生を惨めにしてやるために、わざととんでもない法や儀式をあてがったのを認めている。
――エゼキエル書20:25−26(本文pp.108−109)

「わたしのもとにきながら、自分の父や母、妻や子供たち、兄弟姉妹を憎まないものは、わたしの弟子にはなれない」
――ルカ伝14:26(本文p152)

「女は教会では沈黙すべきである。なぜなら女はしゃべることを許されておらず、従属すべきだからだ。これは律法も言っていることである。もし女が何かを知りたいと思ったなら、家で夫にきくがよい」
――コリント人への前の書14:34−35(本文pp.203−204)

 んなこと書いてあるわけなかろう,と思って新約聖書をチェックしてみると(旧約は持ってない),その通りにちゃんと書いてある.ちょっと信じられなかった.

 Kenのガイドに従うと,旧約聖書は理不尽な神さまの傍若無人な世界.福音書で描かれるイエスは個人主義的で独善的なコミュニスト.使徒行伝,使徒書簡はキリスト教を世界宗教にするために,イエスの極端な教えを中和し捻じ曲げている…ように読める.
 世界一出版されているキリスト教の経典がこんな本だったとは…なぜ都合のいいように書き換えなかったのか不思議.

 旧約・新約聖書を片手に読んでみることをお勧めします.山形浩生お得意の,口語体での訳がぴったりはまって,読みやすく面白い.
 …ってか,この本を読んだら絶対に聖書が読みたくなるぞ.皮肉ではなく,キリスト教普及に一役買える名著だ.


読了 2001.02
硬度 □□□
読みやすさ ☆☆☆
読む価値 ☆☆☆
bk1での情報

contents

chapter 0 はじめに
基本のはなし020
どの聖書?022
ケンの聖書購入ガイド024
聖書に出てこないもの025
聖書キャラクターベストテン027
一目でわかるアイコン早見表030

 
chapter 1 旧約聖書へようこそ
はじめに034
アダムとその一家035
モーゼと出エジプト記044
約束の地060
サムソン063
イスラエル王国066
約束の地:後日談085
わけわかんないのから崇高なのまでいろいろ086
預言者たち098

 
chapter 2 新約聖書へようこそ
四つの福音130
イエス、でしょう。救世主、じゃないでしょう131
なぜイエスが神さまよりいいか134
イエスの物語138

 
chapter 3 二次会――イエスが帰ってから
タルソのサウル187
使徒書簡192
おっかない未来217
最後の審判220

 
chapter 4 聖書のあらすじとあとがき
旧約聖書のあらすじ226
新約聖書の説明247
あとがき253

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